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こんにちは。エネルギーチームの鈴木かずえです。

今日は、私も原告になっている、関西電力高浜原発1、2号機の運転延長認可取り消しを求める裁判の第2回口頭弁論を傍聴しました。

1607人のみなさんから写真などを寄せていただいた、このバナーも持っていきましたよ〜!

今日の報告は少し長いのですが、興味あるところだけでも読んで下さい。

 

国相手の裁判に、関電の参加が認められる

この裁判、相手方は国(とくに認可を出す原子力規制委員会)なのですが、関西電力が参加を申し立ててきて、裁判所に認められ(私たち原告は反対したのですが、裁判の結果に大きな影響を受ける場合、第三者も参加が法律で認められているそうです)、今日は関電のみなさんも来てました。今後は、証拠提出なども行えるそうです。

最初に、裁判長から経過や手続きについて説明がありました。

どこまで遠くても原告になれるの?311後初の司法判断に

裁判所からは、今回の裁判には、広範な地域の原告がいるが、原告適格(原告となる資格—被害を受ける可能性)について、なぜ、原告適格があると考えるかを説明してほしいということで、次回までに書面で提出することになりました。

東京電力福島原発事故後、どこの範囲まで認めるのかの判断を示す最初のケースとなるそうで、注目です。

国から出された書面は3つ。

一つ目は、手続きについてのもの。二つ目は原告側の訴えについて、これを認めないと述べたもので、この中で、私たちの訴えについて、どの訴えが、原子力規制委員会の出したどの許認可についてかを聞いているそうです。三つ目は、私たちが二次提訴をしているので、それについて、二つ目の書面と同じような内容のものということです。

私たち原告側が出した書面も3つあり、一つ目は手続きについてのもの。二つ目は、熊本地震を受けての主張を述べたもの。三つ目は、今年2月から最近までの新聞記事から注目すべきものをまとめたものです。

法廷では、その後、原告2人と弁護士2人の陳述がありました。

国側の陳述はありませんでした。

避難の辛さ知りながら黙っていれば、自分が加害者に

原告の菅野さん

最初は、福島県浪江町から兵庫県に避難した菅野みずえさんでした。

みずえさんは、東京電力福島原発事故の被害者です。

「国にも県にも東電にさえ見棄てられた、もらい火事のような浪江町住人として、避難の辛さ被ばくの悔しさ 知っていながら、黙っていたなら加害者になってしまう」と、この裁判の原告になりました。

「誰ももう、核電(原発)で町ごと逐われる事があってはならないから。被害者の責任果たしたい」とおっしゃっています。

以下、みずえさんのお話しを少しばかりお伝えします。

([ ]内はわたしが加えたものです)

原発から4キロの職場で

わたしは、震災当時、原発から4キロしか離れていない大熊町の福祉機関(包括支援センター)で働いていました。3月11日は、揺れのためセンターの中へは入れず、また、職員は独居の方の安否確認や、情報網が寸断されたために町まで確認に出たりして、4キロ先の原発のことを案じる余裕はありませんでした。 

3月11日当日も東電を信じていた

東電からは、いかなる災害にも耐えうる備えがあると2月に説明を聞いたばかりでした。東電は大企業ですから、安全の上にも安全の措置がされている、万が一の事態にも備えがあると、信じていました。

普段45分の道を3時間半かけて帰宅

地震後はガソリンを入れ、買い物をし、次の1週間に備えるつもりでした。しかしATMは動かず、ガソリンスタンドは安全装置が働いている上に、停電で給油が出来ませんでした。道路は渋滞し、普段は45分の道を3時間半もかけて、まるでパニック映画の中に居るような気持ちで帰宅しました。その時から一度も会えない職場の同僚もいます。

500人の地域に1万2000人もの避難者

翌日からわたし達の地域は避難受け入れ地区となり、住民が500人の地域にピーク時には1万2000人もの人が避難していました。そこに向かって原発から放出された放射能を含んだ濃いプルームが流れていることなど知らないままでした。我が家への避難者もいましたが,12日の夕方、それまで見たことの無い防毒マスクと防護服を着た異様な[姿の]男たちに「どうしてこんな所に居るんだ!此処は危ない!頼む逃げてくれ!福島方面へ30kmを越えてより遠くへ逃げてくれ」と泣くように懇願する指示の後に、半信半疑でしたが、避難者の方には逃げてもらいました。

換気をやめて屋内退避

「外は危険です、外に出ないでください。窓は締め、換気扇は止めてください。換気扇を新聞紙などで目張りして外気が入らないようにしてください。換気が出来ないので石油ストーブは消してください。車で避難している人はエアコンを切ってください」、という指示がありました。東電はいかなる災害にもたえうるといったじゃないの!どうして? と怒りとも恐怖とも言い難い気持ちでした。 

爆発の事実さえ知らされず

あの金気臭い味、肌が乾燥し、鉄板の焼けるような匂い、その空気に触れているところは粉をふいたように白くなりました。肌が異様に乾き、他の人も同様で笑うと唇が裂け、血を流してホラー映画だべと互いの顔を見ながら笑っていました。今は、それが原発からのプルームによるものだったと思うと、居場所の無い被害に恐怖を覚えます。

原発の隣町のわたしの住む浪江町は、国や東京電力はおろか、県からさえも爆発の事実を知らされることも、避難の命令も出ないまま3月15日まで30㎞圏内に留まっていたのです。

当たり前の日常を全て失う

どうやって生きて行くのか、何処に住んだらよいのか分らない不安な気持ち。そういう不安と5年を超えてなお向かい合っているのです。避難先では、何処に何があるか分らない町の仮住まい。避難先が変わる度に一からやり直しです。自宅を出てから6回避難先を転々としました。みんな、ばらばらです。自分たちの祭りもありません。四季折々の地域の集まりも失くしました。何より、全てを話さなくても分りあえる地域のつながりを無くしました。些細なことも共有できる人々と突然切り離されてしまった虚ろさ、当たり前の日常を全て失いました。今のわたし達だけでなく、これまでのご先祖の営々とした努力、費やした時間までなかった事にしてしまいました。 

田舎の人間の命は都会の人の命より価値が低いのか

原発は田舎にあると決まっています。きっと事故があると想定内なのでしょう。田舎の人間の命は都会の人の命より価値は低いと思われているのではないか。わたしは被災して嫌と言うほど身に沁みて思っています。この辛さを経験するのは、土地から切り離されたら生きるのが困難な田舎の人々です。

こったら苦労を誰にもさせたくない

わたし達だけで沢山だと思った頃、子どもたちの甲状腺ガンが次々見つかりました。今174人の子がガンと診断されています。わたしも甲状腺癌の手術を受けました。昨年福島で受けた時に異常はなかったのに、県外に避難して今年避難検診を受けて甲状腺癌と診断され、直ぐに手術が必要とのことで摘出をしました。リンパ節にも転移していました。子どもにも原発事故との因果関係を認めないのですから、わたしも歳のせいと言うことになりました。でも、本当に1年でリンパ節転移する癌になるのかと疑っています。避難する時に3時間並んだスクリーニングで上限の10万CPM[カウント・パー・ミニット。放射線測定機に1分間に入ってきた放射線の数]の針が振り切れたのです。

今黙っていては、わたしも加害者に

裁判長、わたしがこの裁判の原告になろうと決めたのは、今黙っていては何かあった時、わたしも加害者になると思ったからです。知らぬふりは出来ません。

東電の話とは違い、原発は危ないものでした。事故を起こした福島の原発は運転から40年を経ていました。事故の原因も操業年数とのかかわりも何も解明されていないのに、40年を超えて原発を動かそうとするとは、なんてことでしょう。

わたし達の苦労を無かった事にしないでください。誰かに同じ苦労をさせないでください。どうかお願いします。

みずえさんの陳述の全文はこちらで読むことができます。

法廷の絵

(また絵を描きました) 

次に陳述されたのは、岐阜県で農家を営む石井伸弘さんです。 

こちらも少しまとめながらお伝えします。

東日本壊滅は避けられたものの...

岐阜県で有機農業を営む石井です。2008年に移住・就農し、現在に至ります。妻と子ども3人の5人で暮らしています。

有機農業をするということは持続可能性を少しでも高めるためと思ってやっています。現在、約60アールの土地で、年間約60種類の有機野菜を栽培し、名古屋や岐阜市周辺の個人のお客様や、レストラン、有機野菜の宅配会社などに野菜を出荷しています。

東日本壊滅までは至りませんでしたが、まさに不幸中の幸いでしかなかったと思っています。免震重要棟がたまたま半年前にできていたこと、風向きが主に北西の風だったこと。太平洋岸に面していたこと。[放射能の8割は海方向に流れと推定されています] 

汚染地域すべての農家の移住は不可能

現在でも福島の農家はどれだけ放射線量が低いことを証明しても消費者に買ってもらえないことに苦しんでいます。もしくは不当に買いたたかれています。

有機農家のような、健康や食の安全にこだわる農家ほど、顧客が離れてしまいました。端的に言えば生活苦にあえいでいます。仮に汚染がなかったとしても、その影響は甚大です。福井、滋賀、岐阜、愛知と広大な面積を汚染した場合、すべての農家が移住することなど不可能です。

東電は国が救うが農家は救わない

福島原発が起こした事故によって、11兆円を超える損害が発生しました。これは東京電力全社で稼ぐ経常損益が2010年に約3000億円であったことを考えれば、ひとたび事故が起きれば割に合わない投資であることは間違いありません。しかしながら損害のほとんどは国民の負担とされ、電力会社の負担になりません。電力会社として原発は何かあっても国ひいては国民が責任を取ってくれる、極めて都合のよいシステムです。

残念ながら一介の農家である私には、そのような便利なシステムは何もありません。耕地が汚染されれば一から出直しです。風評被害であっても顧客が離れてしまえばやはり一から出直しです。

2015年9月に日本世論調査会が行った世論調査では、2030年に原発比率を20-22%より下げるべきだとした回答は63%に上っています。国民の意見を尊重すれば、第一に安全性に疑問符のつく原発、第二に安全性に瑕疵がなくとも、老朽化した原発から順番に廃炉にしていくべきです。

高浜原発の風下に住む一農家から、強く、高浜原発の廃炉をお願い申し上げます。

石井さんの陳述の全文はこちらで読むことができます。

老朽原発は引退を

熊本地震を踏まえれば、再稼働はありえない

続いて、私たち原告側から、露木弁護士が、熊本地震を受けて、以下の3つのポイントについて陳述しました。

1 想定される最大の揺れの過小評価

想定される最大の揺れ(基準地震動)については、島崎前原子力規制委員長代理が問題提議したもの。熊本地震の状況を当てはめて、国が使っている計算式では、想定される最大の揺れが過小評価されるという問題。

2 大きな地震が複数回おきたこと

熊本地震のような大きな地震が続けておきると施設が耐えられないのではないかという点。

3 屋内退避できない状況となったこと

熊本地震では、2回目の大きな地震のときに自宅に戻ったがために亡くなった例もある。現状の避難計画は、屋内退避が前提となっており不合理。

裁判所に提出した書面はこちらで読むことができます。 

この8カ月に原発トラブル、地震、廃炉、選挙、またトラブル...

最後に、北村栄弁護団長が、今年2月から10月までの新聞報道から、この裁判に関わる重要なものについて説明しました。 

カレンダー形式で見出しなどまとめると…

2月:「40年超」認可差し止めを 高浜原発1、2号機提訴。高浜4号緊急停止 再稼働3日目 

3月: 風化 風評 報道の責務を問い直す時

4月: 熊本で震度7 倒壊など2人死亡 M6.5  余震6強 6弱。大手電力10社が黒字決算(原発がほぼ動いていなくても経営が成り立っている)

5月: フランスやベルギーの老朽原発について、隣国ドイツやスイスから停止要求あいつぐ。

6月: アメリカで原発離れ加速。10年以内に15から20基が廃炉。東京電力幹部、「炉心溶融」という言葉使わなかったのは隠蔽と思うと認める。

7月: 福井新聞社の世論調査で、高浜1、2号機否定5割超。前原子力規制委員長代理の島崎氏が原子力規制委員会に最大の揺れの想定の計算式の見直し求める。

8月: 高浜原発・広域避難訓練 複合災害検証課題残す。最大の揺れの想定の過小評価問題で、国の「強振動評価部会」の纐纈会長も「規制委の判断は誤り」と。

9月: 高浜原発にも納入のメーカー「圧力容器に問題」仏で指摘

10月:「反再稼働」に絞り逆転 新潟知事に米山氏。高浜原発審査で関電課長過労自殺。「安全機能 失う恐れ」規制委 志賀原発2号機に雨水流入・漏電

次回も、大きな応援お願いします!

次回、第3回口頭弁論は来年2月1日(水)10時〜11時 名古屋地方裁判所です。現在、第3次提訴のための原告も募集中(11月18日まで)。くわしくはこちら。 ぜひ、応援お願いします!


 お知らせ:グリーンピース・ジャパンでは、フランスで見つかった、原発の重要な機器の強度不足の問題について、2016年10月25日、委託レポート「日本の原子炉に導入された一次冷却系部材、炭素異常に関するレビュー」を発表しました。ぜひ、こちらのプレスリリースをご覧ください。

報告書要旨(日本語)

報告書全文(英語) ”Irregularities and anomalies relating to nuclear reactor primary coolant circuit components installed in Japanese nuclear power plants”


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